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DEAR MOON

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ようこそ。ここは現在、滝城アキラの台本置き場となっております。

Lost Colors 黄色の話

▽タイトル
Lost Colors 黄色の話

▽比率
1:2:0 計3

▽ジャンル
オリジナル/シリアス/サスペンス

▽キャラ
木崎(キザキ):男/20代後半と見られる男。優しそうな笑顔が特徴的。
まあや:女/幼稚園児くらいの少女。善悪の判別ができないお年頃。
少女:名も無き少女。遠くから様子を見ているだけの、女の子。

▽キャスト
木崎:
まあや:
少女:



▽台本


(──キィキィ)


まあや:おにいちゃん。今日はどんなお話してくれるの?

木崎:そうだね。……今日は、黄色の話をしようか。

まあや:きいろ? まあや、きいろすきー。

木崎:それは良かった。まあちゃん。
    まあちゃんは黄色から、何を思い浮かべるかな?

まあや:うんとね。うーんと……ひまわり!

木崎:ふふ……。元気なまあちゃんらしいね。

まあや:うん! お話きかせて。

木崎:じゃあ始めようか。
    今日は黄色の話……。
    あるところに井戸があったんだ。

まあや:いど? いどってなあに?

木崎:井戸は地面を深く掘った、お水を汲むところだよ。

まあや:へえー。そうなんだ。
     まあや、ひとつかしこくなった!

木崎:うんうん。まあちゃんは物分りが良くて偉いね。

まあや:えっへん! おかあさんにも、よくほめられる!
     あ、お話つづけて。

木崎:うん。その井戸の中を、1人の女の子が覗き込んでる。

まあや:あなをのぞいてる? あぶないよ。

木崎:うん。危ないね。
    だけどその女の子は滑って、井戸の底へと真っ逆さま……。

まあや:きゃあっ……! こわい話だあ……。

木崎:怖がらせちゃったかな? ごめんね。

まあや:ううん。だいじょぶ。
     それで、その女の子は、どうなっちゃったの?

木崎:まあちゃんはどうなっちゃったと思う?

まあや:うーん。ぼちゃんって井戸に落っこちちゃったかなあ?

木崎:でも、その井戸は枯れ井戸だったんだよ。

まあや:……? かれいど? いどとはちがうの?

木崎:枯れ井戸は……井戸の底にお水が無い状態のこと。
    そんなところに飛び込んだら、どうなっちゃうと思う?

まあや:……おにいちゃん。まあや、なんだかこわい。

木崎:怖いことを想像しちゃったのかい?

まあや:うん。きっと、こわいことになっちゃうと思うの。

木崎:そうだね……。
    クックッ……そうかもしれない。


まあや:ねぇ、おにいちゃん。
     まあやはどうしてここにいるの?
     ここにいるの、こわいよ……。
     ぐらぐらするの、あぶないよ……。

木崎:ねぇ、まあちゃん……。
    俺がこの紐から手を離したら、どうなると思う?

まあや:おにいちゃん……。なんだか変。こわい。

木崎:大丈夫。多分、苦しまないよ。大丈夫。
    万一に駄目だったら、その後の溺死も考慮してるから。

まあや:まんいち? できし? おにいちゃん?
     まあやにもわかるようにお話してよ……

木崎:残念。もう時間だからね。
    ばいばい、まあちゃん。

まあや:……やだ。やだよ。
     こわいよ。たすけてよ。おにいちゃ……


(──キィキィ)


(─────カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ)


木崎:まあちゃん……。
    お水の無い井戸は、こうなるんだよ。
    深い深い井戸の底は、ここからじゃ暗くて見えないから、
    まあちゃんにしか、本当の答えは分からないけど……。

   ああ、そうだ。黄色の話をしていたんだったね。
    その井戸には、
    最後に一片(ひとひら)の銀杏(いちょう)の葉が落ちるんだ。
    まるで女の子を追いかけるように……ね。
    その葉の色は綺麗に紅葉して、
    それはそれは素敵な黄色だったんだよ。

   さぁ、物語をちゃんと終わらせようか。これでおしまいだよ




少女:その井戸に、水は一滴もありませんでした。
    誰にも使われていない釣瓶(つるべ)が、寂しく吊られていました。

    閑散とした場所にある井戸の周りは、とても殺風景でした。
    しかし、井戸の傍(そば)にある一本の大きな銀杏の木から、
    ひらひらとたくさんの葉が舞い落ちるそうです。

    その日は強風でしたので、
    一片に留まらない『黄色』が、
    たくさん井戸の中へと舞い降りて行きました。

    その井戸に、水は一滴もありませんでした。
    そういえば、今日は、誰にも使われていない釣瓶が、
    見当たりませんね……。


----End.




▽コメント
木崎さんシリーズ第一弾になります。
昔書いた『黄色い話』のリメイクです。
台本用にものすごくアレンジしましたが、内容はほぼ同じです。
しかしこれ、内容的に大丈夫なんだろうか。色々と。
by hmakers | 2009-07-14 03:48 | 声劇台本

by hmakers