EGOIST -Destroy The Evildoer-
▽タイトル
エゴイスト デストロイ ザ イーヴルドアー
EGOIST -Destroy The Evildoer-
▽比率
3:2:1 計6
▽ジャンル
オリジナル
▽キャラ
■Master
⇒マスター/男
Tシリーズを統括する、『マスター』と呼ばれる男。
自分こそ正義と考える、エゴイスト。
■T1-Dorf
⇒ドルフ/男
おおざっぱな性格だけど、やる時はやる。
女の子好きな、頼れる兄貴タイプ。一応、リーダー。
■T2-Sality
⇒サリティ/女
大人しいお姉さんタイプ。
たどたどしい話し方をする、恥ずかしがり屋さん。
■T3-Bagle
⇒バグル/男(不問)
言いたいことははっきりと言う、クールに毒を吐く少年。
嫌味に聞こえるような発言をするが、悪意はない。はず。
■T4-Zafi
⇒ザフィ/女
頭のネジがたくさん取れているような、はっちゃけ系元気っ娘。
明るく攻撃的。その破壊力は相当なもの。
■T5-Nyxem
⇒ニィゼム/男
影は薄いが実は美形のミステリアスなお兄さん。
思慮深いわりに、少しばかり天然気味。
▽備考
・バグルは少年なので男女問わず、不問です。
▽配役表
EGOIST -Destroy The Evildoer-
マスター:
ドルフ:
サリティ:
バグル:
ザフィ:
ニィゼム:
▽台本
マスター:1、2……3、4、5。
T1(ティーワン)からT5(ティーファイブ)まで、
全て揃っているか?
ドルフ:はい。マスター。
こちら、T1-Dorf(ティーワン・ドルフ)です。
サリティ:T2-Sality(ティーツー・サリティ)、
ここに……おります。
バグル:T3-Bagle(ティースリー・バグル)。
ここにいるよ。
ザフィ:はいはーい!
T4-Zafi(ティーフォー・ザフィ)ちゃん、いまーす!
ニィゼム:T5-Nyxem(ティーファイブ・ニィゼム)。
……ここに。
マスター:よし……。
全て揃っているな。
今夜、日付が変わる午前0時丁度に、
攻撃開始の合図をかける。
それまでは……おとなしくしていてくれ。
ドルフ:了解しました。
各員、おとなしく待機────。
ザフィ:おとなしくなんて、つまんなーい!
早く暴れたいよう! ようようよう!
サリティ:ざ……ザフィさん、落ち着いてください。
マスターのご命令には、
従わないと……です。
ザフィ:やだやだー!
久々に表に出してもらえたんだよ?
おとなーしく待つなんて、
ザフィちゃんに合わないもん! 合わないもん!!
バグル:始まった。
ザフィの駄々っ子癖はなかなか直らないもんだね。
ドルフ:……はぁ。
いつもの事とは言え、
毎度毎度こうだとなぁ。困ったもんだ。
ニィゼム:マスターもどうして、
この様なじゃじゃ馬を飼い慣らしておられるのか。
常日頃、疑問を浮かべる所存。
バグル:まぁ、ほら。
性格に多少難ありでも、性能はお墨付きだから。
ニィゼム:確かに……。
ここにいるTシリーズの中では、
ドルフに次いで2番目に猛威を振るっていると、
どこかのサイトの記事で読んだ事がある。
バグル:へぇ……詳しいね。
ニィゼム:しかし、年間ランキング1位である、
ドルフとの差は大きいものだ。
ドルフ:ははっ、よせよ。
たまたま俺の使い勝手がよかったんだろ?
マスター:(今夜はDorf《ドルフ》やZafi《ザフィ》といった、)
(なかなか強力なモノを揃えた。)
(ハッ……。これは心強い。)
ザフィ:そんなのどーでもいーのっ。
んもう! 早く暴れたいッ!
出撃まであとどれくらいかかるのー!?
サリティ:ええと……。
出撃時刻まで、あと15分弱です……。
基礎プログラム構築済み。
マスターアレンジ考慮済み。
各員、攻撃先指定済み。
プログラム検査完了済み。
全てオールグリーンのはずです……。
ザフィ:サリティ長いッ!
サリティ:ええっ。ああっ……すみません。
ザフィ:いーまーすーぐー
やーりーたーいーのーにー!!
ドルフ:慌てるなよ、ザフィ。
すぐに出撃できるさ。
そしたら、好きなだけ暴れるといいさ。
ザフィ:ホント?
好きなだけやっちゃっていいの?
バグル:いいんじゃない。
それが僕たちのするべき事だし。
ニィゼム:派手に攻撃を仕掛けるといい。
相手を深刻な状況にし、
感傷に浸る間もなく、
絶望へ突き落とす。
それこそが我々の任務。
いや、使命……か。
サリティ:生まれ持った使命ですから……ね。
命令があれば勝手に体が動いてしまう……。
バグル:気に病むことじゃないよ。
むしろ病む方がどうかしてる。
ドルフ:そうだぜ、サリティ。
俺たちは遊びでやってるわけじゃないって、
マスターも言ってたし。
ニィゼム:遊びではないが、
正しいかどうか……ふむ。
マスター:(そうだ。これは遊びじゃあない。)
(正しい者が、悪い者を裁く。)
(たったそれだけの事だ。)
(その為には、Tシリーズが必要不可欠……。)
バグル:そもそも僕たちが善悪を考えるなんて、
おかしな話だよ。
僕たちはただ、マスターに従えばいい。
ザフィ:そうそう!
命令されたらあとはもう、やりたい放題!
壊したり、操ったり、狂わせたり!
宿主が泣いても、許してあげないんだから!
サリティ:いつも申し訳ないなと思っています……。
それでも、私たちはそういう役目ですから……。
ドルフ:サリティはいざ攻撃開始の合図が出ると、
凄い勢いで破壊しつくすのに、
普段は遠慮しがちだなあ。
ま、そこがまた、
可憐な大和撫子の様に、
かわいらしいんだけどなあ。へへっ。
サリティ:ド、ドルフさん……!
そのようなお言葉、勿体無いですし、
恥ずかしいです……。
ドルフ:そういうトコがいいんだよなぁ。
ザフィも少しは見習ってみなー?
ザフィ:むーっ!
そんなこと言ってるとドルフも粉々にするから!
ドルフ:おーっと、わりぃわりぃ。
粉々は勘弁してくれい。
バグル:Tシリーズ同士の干渉か。
……有り得ない話だね。
ニィゼム:我々は宿主を攻撃するように指示されているからな。
基本的に、我々同士が戦うことなどはないだろう。
本来、こうして出撃前に話し合いしていることも、
不思議なものだ。
ドルフ:でもまぁ、あれじゃん?
ソロ出撃待ち中に、
1人で武者震いしてるのも、寂しいもんだ。
バグル:今夜はこうして5人いるけど、
結局は個人で行くんだよね。
同じ宿主を2人以上で攻撃する事なんて滅多にない。
ドルフ:そうだけどさぁ。
っていうか、2人以上で行くとさ、
大体オーバーキルになるんだよな。
ニィゼム:その場合は、Tシリーズ同士の干渉と言っても、
いいのかもしれないな。
バグル:干渉じゃなくて、
侵食度の競り合いじゃない?
ニィゼム:確かに。
そこでお互いの性能差が問われるという事か。
サリティ:今夜は皆さん、
最終的にはバラバラの出撃ですから、
大丈夫ですよ……。
ザフィ:ほんっと、今夜も楽しみっ♪
マスターの出撃合図まだかなあ。まだかなあー。
マスター:午前0時、10分前だ。
今夜も楽しい夜になりそうだ……。
Tシリーズ、準備はいいか。
ザフィ:マスター!
まあってましたーっ!
ザフィちゃんはいつでもいけまーっす!
ドルフ:こ、こら、ザフィ……!
オレも、いつでも出撃できます!
バグル:待ちくたびれたよ、マスター。
早く始めよう?
サリティ:バ、バグルさんまでっ……。
えっ、えっと……。
私も、いつでも出撃可能……です。
ニィゼム:今夜は本当に賑やかなメンバーだ。
マスター。指示をお願いします。
マスター:(手筈は整っている。完璧だ。)
(これは正義の鉄槌。)
(宿主共は、精々、畏怖と言うものを知るといい……)
ザフィ:マスター?
マースーター?
……マスターったら!
指示を、く・だ・さ・いっ!
ニィゼム:何か、考え事をしているのかもしれない。
サリティ:静かに待ちましょう……ザフィさん。
ザフィ:みゅー……。
もうすぐ0時ジャストだよーう。
ドルフ:まーまー。気楽に待とうぜー?
バグル:ドルフはお気楽過ぎるよね。
ドルフ:へ? そうか?
ドルフが固すぎるんじゃねーの?
マスター:……!
あぁ、すまない。
それじゃあ、始めようか。
各員、指定攻撃先と攻撃方法のチェックはできているな?
ドルフ:もちろんです。
心配いりませんよーっと。
サリティ:IPアドレス並びにURL、メールアドレス等、
全員記憶済み……です。
バグル:今回はメールアドレスだけでも、
最低限覚えていればいいかな。
サリティ:そう……ですね。
でも、大事な指定攻撃先……です。
ニィゼム:私は今回も複数のメール添付ファイルとして出撃します。
宿主に感染完了した後、
アクセス可能な特定のファイルへ、
「DATA Error [47 0F 94 93 F4 K5]」
と、上書きして破壊。宿主の情報は、
定期的に指定されたWebサイトへ送信致します。
マスター:Nyxem《ニィゼム》はいい仕事をする。
今回も期待しているよ。
ニィゼム:有り難きお言葉、感謝致します。
仰せのままに……。
ザフィ:んーと。ザフィちゃんも、偽造メールかな?
世界各国に添付ファイルメールを送信しちゃってくださいっ。
ファイアーウォールなんか、上書きしちゃうんだからー!
タスクマネージャとか、
レジストリ・エディタロックも任せてくーださーいなっ。
サリティ:ザフィさん、
ポート番号は覚えてますか……?
ザフィ:ポート8181でしょ? バッチシ☆
バックドアして、ファイルをアップロード!
そしたら実行するー。
ドルフ:さすがのザフィってとこだな。
マスター:Zafi《ザフィ》の性能は本当に素晴らしい。
近年稀に見る逸材だ。
人気が出るのも納得の性能だ。
派手に暴れてくれ。
ザフィ:はあーい!
まっかせといてくださいっ!
バグル:ん。僕もメールか。
途中まで行き先がサリティと一緒だ。
サリティ:バグルさんと同行き先同着後、
バグルさんの大量メール送信機能に乗って、
そこから私は単独で行動します……。
バグル:僕は宿主がPCを起動したら、同時に自動起動。
感染したシステムから、電子メールアドレスを収集。
他にもあるけど、主にこんな感じかな。
爆発的感染と、繁殖が見ものかも。
サリティ:うう……。
今回も寄生完了後に、
悪質極まりないメッセージボックスを表示したりします……。
続けて、あらかじめ定義されているサーバから、
さらに悪質ソフトウェアをダウンロード致します……。
マスター:Bagle《バグル》及びSality《サリティ》。
やり方の鬼畜さがとても気に入っている。
滞りなく、攻撃してくれ。
バグル:了解。でもマスター。
鬼畜なのは、サリティだけだよ。
僕はその前口上に過ぎない。
サリティ:そ、そんな……。
バグルさん、私、そんなに鬼畜ですか……?
バグル:そうでもないよって、言って欲しい?
サリティ:えっ……。
そ、それなら安心ですけど……。
バグル:嘘だよ。
サリティ:……!
バ、バグルさん……ひどい……。
ニィゼム:マスター。残り時間が1分を切りました。
ザフィ:早く出撃しようよーっ!
もう、ザフィちゃん、やる気満々なんだからー!
ドルフ:うおおおい。俺の報告がまだだろー!
サリティ:ですが、マスターは時間厳守の方ですし……。
ドルフ:早口で言えばいいんだな?!
えーっと!
俺は今回もロマンチックなメッセージカードに偽造──。
マスター:Dirf《ドルフ》はTシリーズで現在最も有能だ。
何の問題もない。そのまま行け。
ドルフ:は、はいっ!
ありがとうございます!
……へへっ。誉められちった!
ニィゼム:……攻撃開始まで、残り30秒。
ザフィ:ん~~~!
この攻撃開始前のわくわく感!
ゾクゾクする~ッ!
バグル:結局、今回はみんなメール攻撃か。
サリティ:そうですね……。
バグルさん、途中まで、宜しくお願いします……。
バグル:足手まといなら、置いてくだけ。
サリティ:そ、そんな……頑張りますっ。
ドルフ:おー、バグル。
あんまりサリティのこと、イジメんなよ?
バグル:大丈夫だよ。
サリティは正真正銘の『鬼畜』だから。
サリティ:うう……。
あんまり『鬼畜』って言わないでくださいよぉ……。
ドルフ:っと……10秒前。
皆、準備できているな。
ザフィ:もっちろーん!
がんばっちゃうもんね☆
ニィゼム:マスターの意向のままに……。
バグル:ここからは仕事モード。
さっさとパンデミックしよう。
サリティ:い、行きます……!
ドルフ:うっしゃ、気合入れていくぜー!
マスター:午前0時00分。
コンピューターウイルス名、
Trojan horse《トロイの木馬》。
一斉送信完了。
これより、今夜も世界中の悪を淘汰する。
自分の脆弱さを呪いながら、
PCがウイルスに感染していく様を、
指を咥えて眺めているといい。
世界は情報格差《デジタルデバイド》し過ぎた。
情報弱者は滅びる運命。
淘汰されて至極当然。
ウイルスを駆除する事も、
防御する事も出来な劣等生は、
私の放つウイルスで朽ちればいい。
繰り返す。
これは、正義の鉄槌だ。
悪は滅びる運命。
さぁ、宴の始まりだ。
----End.
▽コメント
ウイルス『トロイの木馬』を題材にしたお話です。
自分でも書いたことのないジャンルに突撃して、
四苦八苦しながら楽しく書きました。
擬人化トロイさんたちの行く末やいかに。
愉快犯ではなく、酷く歪んだ確固たる意思を持って、
マスターはウイルスを放ってますが…。
サイバーテロは犯罪です。
くれぐれも真似をしないようお願いいたします。
って書いておかないと、
何か面倒事があった時に困るので、一応書いてみました。
「これは第一話ですよね?」
という質問を頂きましたが…、うーん。
かなり需要のなさそうな話を書いたので、続編は…。
気が向いたらということで。
⇒2010/04/28
大幅に加筆修正。
・テキストの不自然な部分を修正しました。
・ドルフとバグルにセリフが増えました。
エゴイスト デストロイ ザ イーヴルドアー
EGOIST -Destroy The Evildoer-
▽比率
3:2:1 計6
▽ジャンル
オリジナル
▽キャラ
■Master
⇒マスター/男
Tシリーズを統括する、『マスター』と呼ばれる男。
自分こそ正義と考える、エゴイスト。
■T1-Dorf
⇒ドルフ/男
おおざっぱな性格だけど、やる時はやる。
女の子好きな、頼れる兄貴タイプ。一応、リーダー。
■T2-Sality
⇒サリティ/女
大人しいお姉さんタイプ。
たどたどしい話し方をする、恥ずかしがり屋さん。
■T3-Bagle
⇒バグル/男(不問)
言いたいことははっきりと言う、クールに毒を吐く少年。
嫌味に聞こえるような発言をするが、悪意はない。はず。
■T4-Zafi
⇒ザフィ/女
頭のネジがたくさん取れているような、はっちゃけ系元気っ娘。
明るく攻撃的。その破壊力は相当なもの。
■T5-Nyxem
⇒ニィゼム/男
影は薄いが実は美形のミステリアスなお兄さん。
思慮深いわりに、少しばかり天然気味。
▽備考
・バグルは少年なので男女問わず、不問です。
▽配役表
EGOIST -Destroy The Evildoer-
マスター:
ドルフ:
サリティ:
バグル:
ザフィ:
ニィゼム:
▽台本
マスター:1、2……3、4、5。
T1(ティーワン)からT5(ティーファイブ)まで、
全て揃っているか?
ドルフ:はい。マスター。
こちら、T1-Dorf(ティーワン・ドルフ)です。
サリティ:T2-Sality(ティーツー・サリティ)、
ここに……おります。
バグル:T3-Bagle(ティースリー・バグル)。
ここにいるよ。
ザフィ:はいはーい!
T4-Zafi(ティーフォー・ザフィ)ちゃん、いまーす!
ニィゼム:T5-Nyxem(ティーファイブ・ニィゼム)。
……ここに。
マスター:よし……。
全て揃っているな。
今夜、日付が変わる午前0時丁度に、
攻撃開始の合図をかける。
それまでは……おとなしくしていてくれ。
ドルフ:了解しました。
各員、おとなしく待機────。
ザフィ:おとなしくなんて、つまんなーい!
早く暴れたいよう! ようようよう!
サリティ:ざ……ザフィさん、落ち着いてください。
マスターのご命令には、
従わないと……です。
ザフィ:やだやだー!
久々に表に出してもらえたんだよ?
おとなーしく待つなんて、
ザフィちゃんに合わないもん! 合わないもん!!
バグル:始まった。
ザフィの駄々っ子癖はなかなか直らないもんだね。
ドルフ:……はぁ。
いつもの事とは言え、
毎度毎度こうだとなぁ。困ったもんだ。
ニィゼム:マスターもどうして、
この様なじゃじゃ馬を飼い慣らしておられるのか。
常日頃、疑問を浮かべる所存。
バグル:まぁ、ほら。
性格に多少難ありでも、性能はお墨付きだから。
ニィゼム:確かに……。
ここにいるTシリーズの中では、
ドルフに次いで2番目に猛威を振るっていると、
どこかのサイトの記事で読んだ事がある。
バグル:へぇ……詳しいね。
ニィゼム:しかし、年間ランキング1位である、
ドルフとの差は大きいものだ。
ドルフ:ははっ、よせよ。
たまたま俺の使い勝手がよかったんだろ?
マスター:(今夜はDorf《ドルフ》やZafi《ザフィ》といった、)
(なかなか強力なモノを揃えた。)
(ハッ……。これは心強い。)
ザフィ:そんなのどーでもいーのっ。
んもう! 早く暴れたいッ!
出撃まであとどれくらいかかるのー!?
サリティ:ええと……。
出撃時刻まで、あと15分弱です……。
基礎プログラム構築済み。
マスターアレンジ考慮済み。
各員、攻撃先指定済み。
プログラム検査完了済み。
全てオールグリーンのはずです……。
ザフィ:サリティ長いッ!
サリティ:ええっ。ああっ……すみません。
ザフィ:いーまーすーぐー
やーりーたーいーのーにー!!
ドルフ:慌てるなよ、ザフィ。
すぐに出撃できるさ。
そしたら、好きなだけ暴れるといいさ。
ザフィ:ホント?
好きなだけやっちゃっていいの?
バグル:いいんじゃない。
それが僕たちのするべき事だし。
ニィゼム:派手に攻撃を仕掛けるといい。
相手を深刻な状況にし、
感傷に浸る間もなく、
絶望へ突き落とす。
それこそが我々の任務。
いや、使命……か。
サリティ:生まれ持った使命ですから……ね。
命令があれば勝手に体が動いてしまう……。
バグル:気に病むことじゃないよ。
むしろ病む方がどうかしてる。
ドルフ:そうだぜ、サリティ。
俺たちは遊びでやってるわけじゃないって、
マスターも言ってたし。
ニィゼム:遊びではないが、
正しいかどうか……ふむ。
マスター:(そうだ。これは遊びじゃあない。)
(正しい者が、悪い者を裁く。)
(たったそれだけの事だ。)
(その為には、Tシリーズが必要不可欠……。)
バグル:そもそも僕たちが善悪を考えるなんて、
おかしな話だよ。
僕たちはただ、マスターに従えばいい。
ザフィ:そうそう!
命令されたらあとはもう、やりたい放題!
壊したり、操ったり、狂わせたり!
宿主が泣いても、許してあげないんだから!
サリティ:いつも申し訳ないなと思っています……。
それでも、私たちはそういう役目ですから……。
ドルフ:サリティはいざ攻撃開始の合図が出ると、
凄い勢いで破壊しつくすのに、
普段は遠慮しがちだなあ。
ま、そこがまた、
可憐な大和撫子の様に、
かわいらしいんだけどなあ。へへっ。
サリティ:ド、ドルフさん……!
そのようなお言葉、勿体無いですし、
恥ずかしいです……。
ドルフ:そういうトコがいいんだよなぁ。
ザフィも少しは見習ってみなー?
ザフィ:むーっ!
そんなこと言ってるとドルフも粉々にするから!
ドルフ:おーっと、わりぃわりぃ。
粉々は勘弁してくれい。
バグル:Tシリーズ同士の干渉か。
……有り得ない話だね。
ニィゼム:我々は宿主を攻撃するように指示されているからな。
基本的に、我々同士が戦うことなどはないだろう。
本来、こうして出撃前に話し合いしていることも、
不思議なものだ。
ドルフ:でもまぁ、あれじゃん?
ソロ出撃待ち中に、
1人で武者震いしてるのも、寂しいもんだ。
バグル:今夜はこうして5人いるけど、
結局は個人で行くんだよね。
同じ宿主を2人以上で攻撃する事なんて滅多にない。
ドルフ:そうだけどさぁ。
っていうか、2人以上で行くとさ、
大体オーバーキルになるんだよな。
ニィゼム:その場合は、Tシリーズ同士の干渉と言っても、
いいのかもしれないな。
バグル:干渉じゃなくて、
侵食度の競り合いじゃない?
ニィゼム:確かに。
そこでお互いの性能差が問われるという事か。
サリティ:今夜は皆さん、
最終的にはバラバラの出撃ですから、
大丈夫ですよ……。
ザフィ:ほんっと、今夜も楽しみっ♪
マスターの出撃合図まだかなあ。まだかなあー。
マスター:午前0時、10分前だ。
今夜も楽しい夜になりそうだ……。
Tシリーズ、準備はいいか。
ザフィ:マスター!
まあってましたーっ!
ザフィちゃんはいつでもいけまーっす!
ドルフ:こ、こら、ザフィ……!
オレも、いつでも出撃できます!
バグル:待ちくたびれたよ、マスター。
早く始めよう?
サリティ:バ、バグルさんまでっ……。
えっ、えっと……。
私も、いつでも出撃可能……です。
ニィゼム:今夜は本当に賑やかなメンバーだ。
マスター。指示をお願いします。
マスター:(手筈は整っている。完璧だ。)
(これは正義の鉄槌。)
(宿主共は、精々、畏怖と言うものを知るといい……)
ザフィ:マスター?
マースーター?
……マスターったら!
指示を、く・だ・さ・いっ!
ニィゼム:何か、考え事をしているのかもしれない。
サリティ:静かに待ちましょう……ザフィさん。
ザフィ:みゅー……。
もうすぐ0時ジャストだよーう。
ドルフ:まーまー。気楽に待とうぜー?
バグル:ドルフはお気楽過ぎるよね。
ドルフ:へ? そうか?
ドルフが固すぎるんじゃねーの?
マスター:……!
あぁ、すまない。
それじゃあ、始めようか。
各員、指定攻撃先と攻撃方法のチェックはできているな?
ドルフ:もちろんです。
心配いりませんよーっと。
サリティ:IPアドレス並びにURL、メールアドレス等、
全員記憶済み……です。
バグル:今回はメールアドレスだけでも、
最低限覚えていればいいかな。
サリティ:そう……ですね。
でも、大事な指定攻撃先……です。
ニィゼム:私は今回も複数のメール添付ファイルとして出撃します。
宿主に感染完了した後、
アクセス可能な特定のファイルへ、
「DATA Error [47 0F 94 93 F4 K5]」
と、上書きして破壊。宿主の情報は、
定期的に指定されたWebサイトへ送信致します。
マスター:Nyxem《ニィゼム》はいい仕事をする。
今回も期待しているよ。
ニィゼム:有り難きお言葉、感謝致します。
仰せのままに……。
ザフィ:んーと。ザフィちゃんも、偽造メールかな?
世界各国に添付ファイルメールを送信しちゃってくださいっ。
ファイアーウォールなんか、上書きしちゃうんだからー!
タスクマネージャとか、
レジストリ・エディタロックも任せてくーださーいなっ。
サリティ:ザフィさん、
ポート番号は覚えてますか……?
ザフィ:ポート8181でしょ? バッチシ☆
バックドアして、ファイルをアップロード!
そしたら実行するー。
ドルフ:さすがのザフィってとこだな。
マスター:Zafi《ザフィ》の性能は本当に素晴らしい。
近年稀に見る逸材だ。
人気が出るのも納得の性能だ。
派手に暴れてくれ。
ザフィ:はあーい!
まっかせといてくださいっ!
バグル:ん。僕もメールか。
途中まで行き先がサリティと一緒だ。
サリティ:バグルさんと同行き先同着後、
バグルさんの大量メール送信機能に乗って、
そこから私は単独で行動します……。
バグル:僕は宿主がPCを起動したら、同時に自動起動。
感染したシステムから、電子メールアドレスを収集。
他にもあるけど、主にこんな感じかな。
爆発的感染と、繁殖が見ものかも。
サリティ:うう……。
今回も寄生完了後に、
悪質極まりないメッセージボックスを表示したりします……。
続けて、あらかじめ定義されているサーバから、
さらに悪質ソフトウェアをダウンロード致します……。
マスター:Bagle《バグル》及びSality《サリティ》。
やり方の鬼畜さがとても気に入っている。
滞りなく、攻撃してくれ。
バグル:了解。でもマスター。
鬼畜なのは、サリティだけだよ。
僕はその前口上に過ぎない。
サリティ:そ、そんな……。
バグルさん、私、そんなに鬼畜ですか……?
バグル:そうでもないよって、言って欲しい?
サリティ:えっ……。
そ、それなら安心ですけど……。
バグル:嘘だよ。
サリティ:……!
バ、バグルさん……ひどい……。
ニィゼム:マスター。残り時間が1分を切りました。
ザフィ:早く出撃しようよーっ!
もう、ザフィちゃん、やる気満々なんだからー!
ドルフ:うおおおい。俺の報告がまだだろー!
サリティ:ですが、マスターは時間厳守の方ですし……。
ドルフ:早口で言えばいいんだな?!
えーっと!
俺は今回もロマンチックなメッセージカードに偽造──。
マスター:Dirf《ドルフ》はTシリーズで現在最も有能だ。
何の問題もない。そのまま行け。
ドルフ:は、はいっ!
ありがとうございます!
……へへっ。誉められちった!
ニィゼム:……攻撃開始まで、残り30秒。
ザフィ:ん~~~!
この攻撃開始前のわくわく感!
ゾクゾクする~ッ!
バグル:結局、今回はみんなメール攻撃か。
サリティ:そうですね……。
バグルさん、途中まで、宜しくお願いします……。
バグル:足手まといなら、置いてくだけ。
サリティ:そ、そんな……頑張りますっ。
ドルフ:おー、バグル。
あんまりサリティのこと、イジメんなよ?
バグル:大丈夫だよ。
サリティは正真正銘の『鬼畜』だから。
サリティ:うう……。
あんまり『鬼畜』って言わないでくださいよぉ……。
ドルフ:っと……10秒前。
皆、準備できているな。
ザフィ:もっちろーん!
がんばっちゃうもんね☆
ニィゼム:マスターの意向のままに……。
バグル:ここからは仕事モード。
さっさとパンデミックしよう。
サリティ:い、行きます……!
ドルフ:うっしゃ、気合入れていくぜー!
マスター:午前0時00分。
コンピューターウイルス名、
Trojan horse《トロイの木馬》。
一斉送信完了。
これより、今夜も世界中の悪を淘汰する。
自分の脆弱さを呪いながら、
PCがウイルスに感染していく様を、
指を咥えて眺めているといい。
世界は情報格差《デジタルデバイド》し過ぎた。
情報弱者は滅びる運命。
淘汰されて至極当然。
ウイルスを駆除する事も、
防御する事も出来な劣等生は、
私の放つウイルスで朽ちればいい。
繰り返す。
これは、正義の鉄槌だ。
悪は滅びる運命。
さぁ、宴の始まりだ。
----End.
▽コメント
ウイルス『トロイの木馬』を題材にしたお話です。
自分でも書いたことのないジャンルに突撃して、
四苦八苦しながら楽しく書きました。
擬人化トロイさんたちの行く末やいかに。
愉快犯ではなく、酷く歪んだ確固たる意思を持って、
マスターはウイルスを放ってますが…。
サイバーテロは犯罪です。
くれぐれも真似をしないようお願いいたします。
って書いておかないと、
何か面倒事があった時に困るので、一応書いてみました。
「これは第一話ですよね?」
という質問を頂きましたが…、うーん。
かなり需要のなさそうな話を書いたので、続編は…。
気が向いたらということで。
⇒2010/04/28
大幅に加筆修正。
・テキストの不自然な部分を修正しました。
・ドルフとバグルにセリフが増えました。
by hmakers
| 2009-07-23 13:14
| 声劇台本